理事長 ご挨拶

住育で生涯現役楽しく暮らす宇津崎光代


住育で世界中のお母さんを太陽にしたい」

 家事、子育て、介護が楽な住まいで幸せ家族を増やしたい。そのような願いから、37年かけてたどりついたのが「住育」です。「世界中のお母さんを太陽にしたい」と、この赤いエプロン姿で飛び回っています。

私は62年前、コウノトリで有名な兵庫県の豊岡市で生まれました。私の兄は、私が生まれる前に囲炉裏に落ち全身やけで亡くなりました。光というその兄の代わりということで、光代と名付けられたのです。教育者だった父からは、「人の役に立つ人になりなさい」と言われながら大きくなりました。

京都で小学校教師になり、建築家だった夫と結婚、一男二女をもうけました。教師が天職と思っていましたが、夫の経営する建設会社を手伝うことになり、子育てをしながら経理、お茶汲み、工事現場、営業と一人で何役もこなしました。イライラして子どもに八つ当たりもしました。ある日、「これは住まいに原因がある」とひらめきました。

 子どもが帰宅しても家族の顔が見えません。足を高く上げないと入れない湯船、使いたい場所にはない収納スペース、気持ちよく朝の洗面ができない洗面所、玄関のすぐ横にあるトイレ、1階で洗濯して干し場は2階のベランダ・・・。

 現場に出れば出るほど、間取りに大きな疑問が生まれました。あるとき思い切って夫に口出ししたら、「ど素人はだまっとけ」と叩かれました。当時の建築の世界は男性社会で、「家は建てれば売れる時代」でした。本格的に家づくりを勉強しようと、子育てをしながら睡眠3時間で3つのスクールに通い、現場の職人さんを師匠に学びました。欧米に住まいや福祉の勉強にも出かけました。「主婦の代弁者をしたい」と、1986年には株式会社ミセスリビングを設立しました。目指したのは、家族がワクワク帰りたくなる家、お母さんが家事や子育て、介護が楽にできて健康で暮らしやすい家でした。
 スタートは順調でしたがバブル崩壊の波をかぶり、会社のビルはおろか、自宅から別荘まですべてを失い、さらに1999年には夫ががんで亡くなりました。残されたのは3人の子どもと莫大な借金です。どん底の私を救ってくれたのは2人の娘でした。家の中での家族の死や、3人の子育て、母の介護などから学び続けたアイデアの総結集として、娘2人と完成させたのが「お母ちゃんの住まい=住育の家」です。2軒並んだこの住まいには、一方に私、もう一方に長女の家族が住み、生活ぶりをモデルハウスとして公開しています。全国から毎日のように見学の方が来られます。

長女が住まいと心理学の関係を勉強し、次女が一級建築士の資格を持ち、3人でお客さまの生活に合った住まいを設計しています。外観にとらわれないで、家族が将来にわたってどういう暮らし方をしたいのか、それを長女の考えた「夢マップ」にまとめて設計します。住育の家に住むようになった皆さんからは、「生活習慣がコロッと変わり、生き方まで変わってしまった」と言われます。テレビの「エチカの鏡」でも紹介されましたが、嫁姑が仲良くなったり、ばらばらの親子が仲直りしたり、離婚寸前だった夫婦に赤ちゃんができたりしています。

滋賀県のある農家では、若夫婦が本宅横のガレージを11坪の住育の家に建て替えました。室内は、お母ちゃんの視線からすべてが見渡せます。1歳のお子さんが、キッチンでお手伝いをするし、夫の散らかしぐせが直り、室内はいつもきれいです。宮崎県のリフォーム例では、以前はごみの山が片付かない家だったのに、改装後は片付くようになった。お母さんの不眠症も治り、自由時間も増えた。20年間お客さんを迎えたことがなかったのに、いまはお客さんがいっぱい来られるようになったということです。

テレビの私のことを知ったご家庭から、「障害があっても楽に暮らせる家を設計してほしい」と依頼されました。13坪の住育の家ですが、「家事も自力でできるようになり、健康になった」と感謝されています。いつお会いしてもニコニコです。
 
住育の家の基本コンセプトは、「お母ちゃんが使いやすい、家族が仲良くなる家」です。▼安全安心なユニバーサルデザインの家▼対面式キッチンや吹き抜けで、家族のコミュニケーションがとれる家▼周りや自然に調和するシンプルな家▼東西南北風が流れ元気になる家▼廊下がなく、洗面所、トイレ、浴室、キッチンがスルーできる家です。

住育入門編として今日からできることは、▽玄関をきれいで楽しい空間にする▽ダイニングテーブルの特等席をお父さんの席にする▽テレビはダイニングから見えない場所に▽朝一番にきれいな空気で家の中を掃除する、です。
住育を進める私に力をくれたのは、2月に亡くなった母でした。住育では、老後まで一生快適に過ごせるかどうかが問われます。幸い、京都のお母ちゃんの家では母も最後まで1人で風呂に入れたし、素敵な笑顔を見せてくれました。笑顔の秘密は、自分でお風呂に入れたという達成感だったのです。
住まいには大きな役割があります。家族を育む「住育の家」が大切です。こんな混沌としている時代だからこそ、住育を広めてみんなの心と体を健康にしようではありませんか。私は失敗だらけのお母ちゃんでしたが、長女は毎日、羨ましくなるくらい楽しい、幸せな暮らしを実現させ、それをオープンにしています。日本中の、いや世界中の皆さんが幸せ家族になってくださるよう、心より願っています。

Facebook Live